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[インサイト事業部]

「ツッコミのテンポがたまらない!」お笑い好き会社員「雨法ほうほ」の“静止画”で魅せるアフレココント

「登場人物全員がセリフを飛ばし、グダグダになる朗読劇」

「役になりきりすぎているゆえに、なかなかうまく進まない人狼」

誰もがツッコまざるを得ない状況に、視聴者視点で怒涛のコメントを入れていくコント動画が、今TikTokで人気を集めています。

投稿した動画はほぼすべてが万バズ。多いときには約400万回再生にもなる人気動画を作るのは、TikTokクリエイターの「雨法ほうほ」さんです。

畳みかけるように画面に表示されるツッコミや、雨法さんがさまざまな声色を使い分けて1人で演じる迫真のアフレコに「ツッコミもボケる側のテンポもたまらない!」「ニコニコ動画のコメント欄を見ているようだ」と注目が集まっています。

しかし、雨法さんの素性は謎に包まれたまま。お笑い芸人がTikTokやYouTubeで人気を集めるケースも多いなか、声とテロップだけで人を笑わせる動画を生み出し続ける雨法さんとは、一体どのような方なのでしょうか。

動画投稿を始めた理由や、コント作りの裏側をお聞きしてきました!

万バズを生むのは“お笑いが好きな会社員”。顔を出さないコント動画

ーー雨法さんは、お笑い芸人として活動されているわけではないんですよね?

雨法さん:

そうです! 普段は一般企業で会社員をしています。雨法ほうほとしての活動は、趣味の延長線上のようなものですね。

ーー2023年からTikTokにコント動画を投稿されていますが、どのようなきっかけで投稿を始めたのでしょうか?

雨法さん:

私はもともとお笑い芸人さんのネタやコントを見るのが好きな人間で、学生のころからお笑いの世界に憧れを持っていました。

地方に住んでいたこともあり、直接劇場に通うことはできなかったのですが、インターネットやテレビでお笑いコンテンツを見たり、友だちと「あの芸人のネタ見た!?」とお笑いの話で盛り上がったりするのは、私にとってもはやルーティンでした。

ただ、どこか恥ずかしさがあって人前でコントをやったり、芸人の道を目指したりすることはなくて。高校生のころは漫才大会に出ようとしたこともあったのですが、受験も重なり出るのをやめてしまいました。今考えれば、出ておけば良かったな…。

ーーそういったご経験もあり、SNSで動画を投稿することになったのですか?

雨法さん:

そうですね。インターネットで自由に好きなことを発信できるようになった今、お笑い芸人じゃなくてもYouTubeやTikTokに面白い動画をあげている人がたくさんいるじゃないですか。だから、自分もやってみようかなと。

ただ、私は社会人として働いているので顔出しができないこともあり、最初はやり方に苦労しましたね。アニメーションなども考えたのですが、絵がうまいわけでもないのでどうしたら良いものかと迷っていました。

ーーそこからどのようにして、今の動画スタイルにたどり着いたのでしょうか。

雨法さん:

参考になったのは、静止画にアフレコだけで勝負するショートコントを投稿されている、もののけさんです。

ネタが面白ければ音声だけでこんなに笑えて、多くの人に見てもらえるんだと衝撃を受けました。

ーーそうしてテロップとアフレコのみの動画が生まれたんですね。投稿を始めて「多くの人に見てもらえているな」と感じた初めての動画はどれでしょうか?

雨法さん:

「登場人物の全員がセリフを飛ばしたり間違えたりしたら、朗読はどうなるのだろう?」というテーマで作った「全員セリフを飛ばした劇『白雪姫』」です。

実はこの動画から、ネタにアップデートを加えていました。それまではネタのなかにいるツッコミが1名だけだったのですが、この動画からは1つのボケに対して2つ以上のツッコミが入るようにしてみたんです。

このネタも、もともとは舞台役者に対して監督1人がツッコむような形式で考えていたのですが、ふと「これ、観客が突っ込んだりざわざわしたりしていたら面白いんじゃないか?」と思いつき、あのような動画になったんですよね。

ーーボケとツッコミというと1対1を発想しがちですが、視点を変えることでより多くの方から見られるようになったのですね!

雨法さん:

そうですね。多くの方に受け入れてもらい、以降はこの形式で動画を作り続けています。さまざまな人がしゃべっているように見せるスタイルが、自分の矢継ぎ早なツッコミとマッチしたんじゃないかな。

また、私の動画がここまで多くの人に受け入れられるようになったのは、TikTokとの相性が良かったからかもしれません。

私はYouTubeにもまったく同じ動画をあげているのですが、内容は変わらないのにYouTubeはあまり伸びなくて…。お笑い芸人さんはよくYouTubeにネタをあげているイメージがあったので、そちらで伸び悩んでいるのはちょっと悲しいですね…(笑)。

私の怒涛のツッコミスタイルの動画がTikTokで伸びたのは、タイパ(タイムパフォーマンス)が良く、とにかく早くたくさん笑わせてくれるものを好むZ世代がよく見ているプラットフォームだからなのかもしれません。

ーーなるほど。たしかに次々に表示されるテロップやツッコミのテンポの良さは、テレビのお笑いというよりインターネット上のお笑いに近いものを感じます。媒体によって受け入れられる笑いの種類が違うのかもしれないですね。

雨法さん:

媒体によって伸びる動画が違うことを知ってからは「TikTokで伸びる動画はどんなものなのだろう?」「どうしたらもっと多くの人に見てもらえるのだろう?」と自分からアルゴリズムに乗っかることもしています。

例えば、TikTokだったら冒頭の2秒がとにかく大事なので、そこに笑いの要素を入れたり、これがどんな笑いを提供する動画なのか伝える要素を入れたりする工夫ですね。

とはいえ、いかに早くボケツッコミを巻き起こせるかが大事なのは、実は漫才も同じなんです。最初にひと笑いがあれば、お客さんは夢中になってくれます。つまり、脚本に真摯に向き合っていれば、TikTokでも見てもらえるんじゃないかと思っているんです。

テンポが良く、作り込まれたお笑いが好き。アフレココント制作の過程

ーー雨法さんは普段は会社員をされているとのことですが、動画はどのように作られているのでしょうか?

雨法さん:

私の動画はかなりシンプルなので、早ければ2〜3時間ほどで動画の編集が終わります。休みの日に一気に作ったり、移動時間にスマホで編集したりと、空いた時間で動画を作っていますね。

ーー複数ツッコミを入れたりシチュエーションを考えたりと、ネタ作りにはさまざまな視点が必要そうですが、ネタ作りに集中する時間などはあるのでしょうか?

雨法さん:

ツッコミについては自分から出てきた言葉をそのままキャラクターに言わせているので、机に向かって悩む時間はほぼありません。「朗読劇」「戦隊もの」などのシチュエーション(ネタの種)も、ふと頭の中で繰り広げられる誰かと誰かの掛け合いを膨らませることで出来上がります。

ネタの種が生まれるのは、寝る前やお風呂に入っているときです。ネタに関係ないことでも良いのであれこれ考え事をしていると、生まれるような気がしています。夢の中で遭遇したシチュエーションをもとにネタを作ることもありますね!

ーー夢の中ですか!それほど普段からお笑いのことを考えていらっしゃるんですね。

雨法さん:

場数を踏んでいるわけではないのにふとした瞬間に脚本が出てくるのは、やっぱり学生時代からお笑いが好きで、見てきたネタの本数が多いことが関係しているのかもしれません。

自分は昔から脚本やネタの構成・作り込みの秀逸さに感動するタイプで、特にサンドウィッチマンさんのようなテンポの良く掛け合いが進むお笑いが好きなんです。

ネタに入った直後からボケとツッコミが入りまくる。でも、それは思いついたことを片っ端からやっているのではなく、きちんと順番に沿ってやっている。そんなネタ作りはやっぱり面白いですね。

私も実は学生時代に、人前に立つ代わりにネタの脚本を書いていたんですよ。お笑いネタ脚本の大会で優勝した経験もあるのですが、そこで書いた脚本や今のネタにも、私の好みは少なからず反映されているのではないでしょうか。

目指すのは誰も傷つけない、みんなのお笑い。これからの展望

ーー次に投稿してみたいネタや、最近思いついたネタを少しだけ聞かせていただけませんか?

雨法さん:

たとえばコンテストで複数の審査員がそれぞれ「星5」「63点」の「Bランク!」のようなバラバラの基準で審査をしてみている側を困らせるネタは、今日思いついたので動画にしたいと思っています!

結局動画にしようとすると思ったよりも面白くなくて投稿を諦めることもあるので、お約束はできないのですが…(笑)。

ーー動画を作っても、投稿しないことがあるんですか?

雨法さん:

はい。完成まで至らず、作っている途中でやめることもあれば、完成してもあまりパッとしないので投稿しないこともあります。

パッとしない動画になる理由はさまざまだと思うのですが「人を惹きつけるワードが少ない」「展開がわかりにくい」など、面白くない動画はあまりウケないのかなと思っています。

例えば、以前に出した「全く設定が定まっていない戦隊ヒーロー」は自分が思っていたよりも伸びなかった動画なのですが、思い返してみるとかなり考えて作り込みすぎたかなと思う節があったんです。もう少しわかりやすく作るべきだったなと反省しました。

「パッとしない」というのは違和感にすぎないのですが、掘り下げてみるとこういった要素が足りていないことが多いですね。

ーーお笑いがお好きということもあり、「面白さ」に対する分析や解像度がとても深いですね。だからこそあのような動画が生まれるのだと思います。他にも、コントを作る上で意識していることはありますか?

雨法さん:

誰が見ても面白く、誰にでもおすすめできるコントであることを大切にしています。子どもから大人まで楽しめる、ディズニー映画みたいなコントですね。

私のネタでは、過激な表現や下ネタ、固有名詞をほとんど使いません。人を傷つけて笑いを取るのは好きではないですし、傷つけるつもりがなくてもネタにされたことに傷つく人がいるかもしれないのが嫌なんです。

また、トレンドのネタや音楽を使うこともしないようにしています。SNSで人気になるためには流行に乗っかることも大事だと思うのですが、それが1年後や2年後に見ると鮮度がなく共感しづらいネタになってしまったり、見られなくなってしまったりするのが寂しくて。

誰にでも、いつまでも見つづけてもらえるコンテンツを提供することを、雨法ほうほのお笑いスタイルでは貫きたいです。

ーー「誰にでも、いつまでも見続けてもらえるお笑い」素敵です!最後に、今後挑戦してみたいことを聞かせていただきたいです。

雨法さん:

多くの方に見ていただけるようになった今でも、まだ自分の動画に対する気恥ずかしさがあります。実はこの活動をしていることは、仕事以外の場所でも誰にも言ってないんです! これは私だけの秘密になっていますし、自分でも動画を何度も見返すことはありません。

そのため、やりがいになるのはインターネット上のコメントや評価なんです。自分の作ったものに対して「笑えました」「こういうところが面白い」と言ってもらえる瞬間が一番嬉しくて。

お笑い好きから始まった趣味なので、これからもマイペースに更新していこうと考えているのですが、今後はYouTubeやInstagram、Xなどでも自分の動画を展開して、多くの人に笑ってもらえるようになれば幸いです。