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[インサイト事業部]
行政はSNS活用で何ができる?成功例や問題点などを解説
現在多くの行政や自治体がSNSを活用し、情報の発信を行っています。
SNSアカウントを持つ人が増えてきたことで、SNSでの情報収集が一般化し、自治体もSNSで情報発信をする必要が増えてきたからです。しかしやみくもに情報を発信しているだけでは、SNSを効果的に運用しているとは言えません。
そこで本記事では、行政での効果的なSNS運用について解説します。
- 行政がSNSを利用するべき理由やメリット
- SNS運用を成功させるためのポイント
- 行政でのSNS成功事例
- 行政がSNS運用をする際に考えたい問題点
この記事を読むことで、行政がSNSを活用することで何ができるかを理解できます。ぜひ今後のSNS運用の参考にしてください。
行政がSNSを活用すべき理由
近年、自治体の間でもSNSを活用しているところが増えています。各自治体はSNSを用いて、住民に伝えるべき情報の発信だけではなく、観光で訪れる人向けの情報なども発信し、ユーザーとのコミュニケーションを取りながら運用しています。
行政のSNS活用について考えていきましょう。
多くの行政がSNSを活用している
現在、どれくらいの自治体がSNSを活用しているかご存じでしょうか。
2023年の全国自治体数1884地域のうち各SNSを利用している自治体数は以下の通りです。各SNSを約半数以上の自治体が導入していることがわかります。
- X/Twitterを利用している自治体は944(50%)
- Facebookを利用している自治体は1,265(67%)
- Instagramを利用している自治体は718(38%)
- Youtubeを利用している自治体は1,071(56%)
- LINEを利用している自治体は1,219(64%)
SNSによる情報収集の一般化
以前までは考えられなかったことですが、個人がスマートフォンを使用してインターネットを利用することが定着したことで、SNSによる情報収集が一般化してきました。
SNSの検索機能を使えば、よりリアルな情報が得られると、若年層を中心にSNSで情報を得る人が増えています。
50代以上のシニア層はテレビや新聞を利用する層が半数を占めていますが、40代以下はWebサイトやSNSを使って情報を得る人の方が多いという調査結果も出ています。テレビや新聞と同じくらい、SNSによる情報収集は日常になっていると言えるでしょう。
参照URL:2022年一般向けモバイル動向調査
広域へ低コストで情報発信が可能
いままで主流だった広報誌の発行などでの情報発信は、広報誌の作成や発送などといった手間や費用がかかっていました。しかしSNSを使えばインターネット上で、日本中、地球上のどこにでもすぐに情報発信ができます。
簡単に使えるデジタルツールがあれば作業も短時間で行えるので、広報誌やチラシ、回覧板などを活用するよりも低コストで、素早く、幅広い人へ情報発信ができるでしょう。
SNSを活用した地域活性化の成功例の増加
SNSを導入したことがない行政や自治体では、SNS活用は難しそうだと思うかもしれません。しかし多くの行政でSNS活用が進んだことで、成功例や実例を探すことが難しくなくなりました。
自分たちで取り組みたいSNS活用と、似たことをしている行政や自治体を参考にすれば、これからSNSを始める自治体も始めやすいでしょう。どのSNSを使うべきか、どんな情報を発信するべきか、成功例を見ながら考えてみてください。
行政がSNSを活用して得られるメリット
SNSの1番の魅力は、素早く幅広い人に向けて情報を発信できることです。SNSを活用することによって行政が得られるメリットを4つ紹介します。
観光、インバウンド対策
写真や動画などのコンテンツを使って地域をPRすることで、地域経済を盛り上げ、町おこしに繋がります。SNSを使って旅行先を検討したり、観光スポットを見つける人は近年増えているので、観光客やインバウンドの増加も見込めるでしょう。
たとえばYouTubeやTikTokなどでの動画配信、InstagramやX(旧Twitter)などでの写真やキャンペーンの拡散などが例としてあげられます。
移住者の増加
地域で暮らす魅力や地域のイベント、移住支援や子育て支援など自治体の売りを広めることによって、移住者の増加が見込めます。
その地域に住んでいなければなかなか得られない情報を発信することで、遠方に住む人が暮らしを想像しやすくなり、移住を検討しやすくなるでしょう。
広報誌やWebサイトに掲載するよりもSNSを活用したほうが、よりたくさんの人に知ってもらいやすくなります。
住民に向けた災害や防災など等の情報発信
外部の人向けだけでなく、その地域に住む人に向けての情報発信でもSNSは役立ちます。災害や防災などの情報はSNSを活用したほうが、拡散の力も合わさり、より素早くたくさんの人に広げることができるでしょう。
それ以外にも相談会などのイベントの情報発信など、必要なタイミングで必要な人に必要な情報を届けられるのはSNSの強みです。
ツールを活用した街の情報収集
SNSは情報発信だけでなく、情報収集のツールとしても利用できます。
自治体のSNSがあることによって、電話や直接窓口で相談しにくい住民からの質問や相談を受けることができるでしょう。住民からの問い合わせや相談を、LINE等で受け付けている自治体もあります。
またハッシュタグを活用してSNSで街の情報を集めることで、電話による通報では気づきにくい地域の問題を把握しやすくなるでしょう。
行政がSNS活用を成功させるためのポイント
SNSを使えば情報発信がスムーズに行え、その結果多くのメリットを得られると紹介しました。しかし、目的なく情報を発信していても、伝えたい人に届けるのは難しいかもしれません。
行政がSNS活用を成功させるために、次のポイントを押さえましょう。
- SNS運用をする目的を明確にする
- ターゲット別にSNSを使い分ける
- SNS担当者を決める
順番に解説します。
SNS運用をする目的を明確にする
個人でSNS運用をするときもそうですが、行政でSNS運用を行う際にもSNS運用の目的をはっきりさせることは大切です。移住のため、観光客を増やすため、自治体のイベントなどの情報発信のため、など行政の抱えている問題によって、SNSの運用目的は異なります。
運用目的が明確でなければ、投稿のコンセプトがブレてしまい、ターゲットに情報が届かず、成果を生み出すことが難しくなります。まずはSNS運用の目的を明確にし、それに合わせた情報発信を心がけましょう。
ターゲット別にSNSを使い分ける
LINEやYouTube、Instagramなど、いくつかのSNSがあり、各SNSごとにユーザー層や得意なコンテンツに違いがあります。各SNSによる特性やユーザー層を理解したうえで、どのSNSを活用するか検討し、ターゲットが多く利用しているSNSを利用したほうが効果的です。
総務省が行った令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書によれば、LINEやYouTubeは幅広い年代をカバーしていますが、InstagramやTikTokは10〜20代の若年層の利用が多くを占めています。
ひとつのSNSに絞らず、ターゲットごとに複数のSNSを使い分けるほうが効果的な場合もあります。
SNS担当者を決める
SNSでの情報発信に複数人が関わると、コンテンツの方向性や目的がずれやすくなるため、SNS担当者を決めておきましょう。最近ではSNS運用を行う専用人材を登用する自治体もあります。
SNSに疎い職員よりも、SNSに触れ合う機会が長い若年層の職員が担当したほうが、若者層へのリーチを伸ばせる場合もあります。。もしもSNSを担当できる職員がいない場合は、地域インフルエンサーの登用やSNS運用を専門とする業者に外注をするのもおすすめです。
行政での各SNS活用例
ここからはX、Facebook、Instagramなど行政の各SNSアカウントの成功事例を紹介します。
X(旧Twitter)|大阪観光局
大阪観光局のX(旧Twitter)では、大阪の街歩きが楽しくなるような情報や写真を投稿しています。大阪観光シンボルキャラクターに男性アイドルグループ・関ジャニ∞を起用した、ポスターや応援メッセージの投稿などは、4000以上のいいねを獲得し話題を集めました。
大阪観光名所のイベント情報や、定期的に「笑顔になれる大阪」などのフォトキャンペーンを開催し、大阪に住んでいる人も住んでいない人に対しても、大阪観光に興味を持てるような情報を発信しています。
Facebook|長崎県南島原市
長崎県南島原市のFacebookは、「撮ってくれんね!南島原コンテスト」を開催し、約半年間で9万3000ものいいねを獲得しました。長崎県南島原市の魅力を写した写真や動画を募り、月に1度表彰しています。その中で印象的な作品を、Facebookで紹介し、ビッグコンテンツになりました。
「たくさんの人に参加してもらいつつ、南島原の魅力を知ってもらうこと」を目的に行われ、民泊の予約者が前年の倍になったそうです。フォトコンテストをきっかけに、「行ってみたい」と考えるユーザーが増えた結果でしょう。
Instagram|富山県広報課
富山県広報課のInstagramは、富山の魅力を伝え、インバウンド需要を取り込むことも目的に運用されています。ユーザーが特定のハッシュタグをつけて投稿した「富山の写真」をリポストし、交流を取りながらコンテンツを育てています。
運用は広報課の若手社員が担当し、投稿のコメントへ返信するなどしてユーザーとのコミュニケーションが、以前よりも活発に行われるようになったそうです。また写真のリポストによって、フォロワー数も10日で500人以上伸びています。
TikTok|MUFG北海道推しごとオーディション
地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の活用促進を図ることを目的として行われた「MUFG北海道推しごとオーディション」は、TikTokを活用しZ世代へのプロモーションを行いました。
認知度に世代間ギャップが生まれてしまっている課題を、TikTokでコンテンツを発信することにより若年層にリーチを広げる取り組みです。
インフルエンサーを起用し、北海道にてショートドラマを撮影することで、地元からも県外からも多くの注目を集めました。
Z世代に行政の事業施策や地方創世の取り組みを知ってもらうためのこの取り組みは、令和5年度企業版ふるさと納税に係る大臣表彰式にて、内閣大臣賞を受賞しました。
YouTube|福岡県北九州市
人口減少に課題を持っている福岡県北九州市は、移住者や定住者を増やすためにYouTubeにてインフルエンサーとのタイアップを行いました。釣り動画が人気のYouTubeインフルエンサーである「釣りよかでしょう。」さんを起用し、海の幸を中心とした北九州市の魅力を伝えたことで、主に釣り好きやアウトドア好きのユーザーにアプローチしています。
また、タイアップ動画の概要欄に、北九州市の仕事情報や住まい情報などの生活情報をまとめた北九州ライフへのリンクを記載することで、興味を持った人が北九州市を知るきっかけに繋がるようにしています。
LINE|兵庫県尼崎市
兵庫県尼崎市ではLINEを活用し、月2回から4回程度、観光やイベント、文化芸術など尼崎の魅力情報を発信しています。災害時での緊急の情報発信もLINEを通じて行っており、住民への広報ツールとしてLINEを活用しています。
2023年よりAI案内サービスを導入することで、24時間対応できるようにしました。これにより市民の疑問に答えられることに加え、過去に集められた質問にもとづいてチャットボットにて対応できるようになったそうです。
行政がSNSを活用するうえでの注意点
SNSを利用した情報発信やユーザーとのコミュニケーションは気軽にできる反面、リスクや注意するべき問題点もあります。行政がSNSを活用するうえでの注意点を、3つ覚えておいてください。
世代間の情報格差が生まれやすい
高齢者にとっては対面での会話や電話、郵便物、広報誌などのアナログなコミュニケーションチャネルのほうが使いやすいと感じる人のほうが多いです。SNSは高齢者の利用率が低いため、世代間の情報格差が生まれやすい点を覚えておきましょう。
SNSの活用をすることで、従来通りの対応を完全に取りやめるのではなく、利用者の使いやすさも考え、情報格差が生まれないように気を配る必要があります。
炎上の危険性
SNSを使った投稿がトラブルに発展する事件も起きています。投稿した本人は大丈夫だろうと思ったことも、顔が見えないことで意図しない意味で伝わってしまい、インターネット上で反感を買い、炎上を起こす可能性はゼロではありません。
炎上を防ぐためのガイドラインを策定したり、ダブルチェック、トリプルチェックなどの運用ルールを作り、トラブルに巻き込まれないような教育体制を整備していくことが重要です。
参考:SNSの特性と危機管理 自治体公式フェイスブックの管理体制について
業務量増加のリスク
SNSを活用することで、窓口や電話での問い合わせが減ったり、広報作業が簡単になり業務が減ると考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、SNSのほうが連絡が取りやすいと考える人は多いため、SNS導入後に件数が大幅に増加する可能性があります。
緊急ではない要件によって、業務増加のリスクがあることを覚えておきましょう。組織内の体制づくりやルール作りを行い、臨機応変に動けるように整備しておくことが必要です。
まとめ
今回は、行政によるSNS活用について解説しました。SNSの利用者、ユーザー層は年々広がっており、情報発信ツールとして活用する行政や自治体は増えています。
気軽に情報発信できるSNSは、今まで認知が届いていなかったターゲットへ認知を広げ、ファンを増やすことができます。各SNSでの自治体の成功事例を参考にしながら、
ターゲットや目的を明確にし、SNS運用を始めてみましょう。
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