Zview

[インサイト事業部]

「誰もがクリエイターを続けられる世の中に」ピクセルアーティスト・びねつが、イベント企画に力を入れるワケ

「好きなことを仕事にする」「趣味で始めたことが仕事になる」

SNSで誰もが自分を発信し、クリエイターとして活躍できるようになった今の時代、こんな働き方に憧れることは多いのではないでしょうか。

でも、実際に好きなことを仕事にするにはさまざまな壁があります。どのように仕事を獲得するの?そもそも何から始めれば良いの?と、わからないことだらけで一歩が踏み出せない!という方も少なくないはずです。

今回は「ピクセルアート」を仕事にし、グッズやパッケージデザインを始め、MV制作やiPhoneケースブランド「iFace」とのコラボレーションなど、幅広いジャンルでイラスト制作を手がけるクリエイター・びねつさんにインタビューを決行!

マルチに活躍するびねつさんに、イラストを描き始めた理由や、イベント企画を積極的に行うわけなどをお聞きしました。

イラストを始めたきっかけは「探求心」。仕事を失い、クリエイターの道へ

ーーびねつさんは、どうしてイラストを描き始めたのですか?

びねつ:僕は今年で32歳になるのですが、実はイラストを描き始めたのはほんの少し前、26歳のときなんです。

社会人になってからイラストを始めたのは、自分のペースで本質的な探求ができるから。僕はもともと理系の大学院に通っていて、バイオ系の生物工学を専攻していました。利益に関係なく、自分の興味を突き詰められる研究活動が大好きだったんですよね。

でも、社会人になるとそんなことばかり言っていられない。特に企業では利益を追い求めなければなりません。経済活動としては当たり前のことなのですが、僕はなんとなく違和感があって…大学院のころに感じた「探求の楽しさ」がどうしても忘れられなかったんです。

そこで、何か自分のペースで本質的な探求ができるものを探していたときに、見つけたのがイラストでした。

ーーそれが仕事になったのはいつのことでしょうか?

びねつ:2022年6月にTwitter経由でいただいたバンドのMV制作がきっかけですね。

実は私、コロナによって仕事を失ってしまいまして。そこで仕事の1つとして思いついたのが、趣味にしていたイラストだったんです。

当時は身内が病気になったり、友人と仲違いを起こしたりと、人生の中でもかなり厳しい時期だったので、藁にもすがる想いでイラストを描いてはSNSで発信していましたね。

そんなときにいただいたこの依頼をきっかけに仕事が増え、独立に至りました。まわりのクリエイターに話を聞くと一般的には本業と同じぐらいに稼げるようになってから独立するルートが多いそうなので危ない橋だとは思います。

でも当時は「やるしかない」って状態だったんですよね。いやあ、うまくいって良かったです!

1番好きな「ピクセルアート」を仕事に。日常を積極的に発信するわけ

ーーびねつさんは、なぜピクセルアートを描こうと思ったんですか?

びねつ:僕はゲームが好きなのですが、初めてやったゲームが「ポケモン」だったこともあり、小さいころからピクセルアートが身近にありました。だから、まずは好きな絵から真似してみようかな、と思ったんです。

もとから絵が得意というわけでもなかったので、今でもピクセルアート以外は本当に描けません(笑)。

ーー選んだのではなく、好きな絵を真似た結果なのですね。

びねつ:はい。やっぱり、好きなものに没頭するって尊いことだと思うんです!

それに、自分の好きなものを知っていたりそれに没頭したりすることは「探求」をするうえですごく役に立ちます。

人間ってやっぱり、アイデンティティがないと答えのない答えを探したりするのが難しくて。だから、好きなものには素直でいたいし、絵を探求するなら好きなものを描きたかったんです。

ーーファンの皆さんはどのような層の方が多いのでしょう?

びねつ:20代後半から30代前半の方が多いですね。これはおそらく僕がInstagramとXを中心に活動しているからだと思います。

でも最近は、リアルイベントによって10代や20代の皆さんと繋がることができている感覚があります。そこにはイラストに興味がある方が集まってくれているので、直接お会いするとファンになってもらえる可能性も高いのかなと。

ーーびねつさんの活動は雑誌『anan』にも掲載されていて、メディア露出の機会も多いですよね。

びねつ:ありがとうございます!このように取材いただけるのは、僕がクリエイターのなかでも、かなり発信者寄りであることを知ってもらえているからだと思うんです。

ーー発信者寄り、ですか?

びねつ:僕はSNS上で、描いたイラストだけではなく、かなり日常的なことや個人的な想いも投稿しているんです。絵を描くことを生業にされている方で、ここまで個人的な発信をしている方って、あんまりいないんじゃないかと。

どうせSNSをやるなら見てくれる人にポジティブな影響を与えたいなと思っていたんです。「ご飯おいしかった〜」「寝るのが世界一好きだから、生まれ変わったらお布団になりたい」的な、素朴な幸せをシェアしたくて。

そんなことを繰り返した結果、クリエイター的にも外交的な人間に見られるようになり、徐々にメディアの方からもお声がかかるようになったのではないかと考えています。

目指すは「もう一押し!」をサポートできるクリエイター。創作を続けられる世界を

ーー今後、目指していることはありますか?

びねつ:もっといろんな場所で見られるようになったら嬉しいですね。街の中に絵を置ける場所は無限にありますし、デジタルでも、イベントのメインビジュアルやオンラインショップの看板など、さまざまなジャンルに展開していきたいです。

今考えているのは商業施設や飲食店、カフェなどでギャラリーのような空間を設計することですね。他のクリエイターさんの作品も展示できるような空間を、いろんな場所に作っていきたいです。

ーー展示ですか!たしかにびねつさんは、イベントへの参加や企画にも精力的に取り組まれていますよね。

びねつ:イベントは、僕の活動のなかでも大きな割合を占めています。企画からメインビジュアルの作成、グッズのデザインなどが一通りできるので、ご依頼はもちろん、個人で開催することも増えていますね。

直近では「DESIGN FESTA vol.59」で出展した「みんなのステッカー屋さん」が大きな企画例です。クリエイターさんを80人ほど集めて、それぞれのステッカーをデザインしてもらい、1つの区画に出展してみました。

僕の企画はクリエイターさんに集まってもらい、みんなでポップアップイベントをやることが多いですね。

ーー個人でもイベントを開くことは可能だと思うのですが、なぜまわりのクリエイターさんを巻き込むのですか?

びねつ:クリエイティブを仕事にするとき、駆け出しのクリエイターには先輩からの後押しや情報がもらえるコミュニティに出入りできることが重要であり、先輩クリエイターはそういった場を意識的に作るのが役割だと考えているからです。

実は僕自身も、イベントに呼んでいただくことでクリエイターとして成長してきました。足を運んだイベントで、主催者の方から「次はクリエイター側として参加してみないか」と声をかけてもらったり、スペースを持っている方から「ポップアップショップをやりませんか」と誘っていただいたり。

でもこれって、ご縁とタイミングがなければ手に入れられないチャンスだと思うんです。

僕は新卒で営業やマネジメントを経験したこともあり、いわゆる「売らない営業」やイベントの企画も苦ではないのですが、クリエイターのなかにはコミュニティを開拓するのが苦手な方もいます。

うまくコミュニティを見つけられなかったり、自分の才能を仕事にする方法を知らなかったりしたことで、才能のあるクリエイターが活躍できなくなるのって、すごくもったいない。

だからこそ、初心者の方からベテランの方まで、クリエイター同士が繋がりやすいイベントを企画していきたいんです。

ーー素敵です。そんなびねつさんご自身は、どんなクリエイターでありたいですか?

びねつ:「もうひと押し!」をサポートできるクリエイターでありたいですね。僕はクリエイターがもっと参入しやすくて活動しやすいエコノミーを作りたいんです。

例えば僕は今、ゲームの開発を行いたいと思っているのですが、挑戦するに当たって、エンジニアさんやゲームクリエイターさんの発信にすごく助けられています。書籍も参考になりますが、結局かゆいところに手が届くのは現場で活躍されている方の生の声なんです。

だから、僕もそういう生の声を届けられる、等身大のクリエイターでありたいと思っています。イベントを企画するまでの過程を記録に残したり、SNSでリアルな生活を届けたりと、もっといろんな方法で発信したい。

これからもどんどん幅を広げていき、みんながクリエイターになったり、クリエイターを続けたりしやすい世界を整備したいと考えています。