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[インサイト事業部]
地域活性化のカギはマーケティングにあり!コツや成功例を紹介
地域の人口減少や経済衰退、高齢化など、多くの課題を抱える地方の自治体が少なくありません。しかし、具体的な解決策や効果的な方法が分からずに悩む方も多いのではないでしょうか。
地域活性化マーケティングは、このような課題に対処するための有効な手法の1つです。行政だけでなく地元企業や地域住民が一体となって取り組むことで、さまざまなメリットをもたらします。
本記事では、地域活性化マーケティングの基礎知識や成功のためのポイントなどを詳しく紹介します。
地域活性化マーケティングとは
地域活性化マーケティングとは、地域を活性化させるためのマーケティング活動です。ここでは、次の3つに分けて解説していきます。
- 地域活性化マーケティングは人・物・金を呼び込む戦略
- 地域活性化マーケティングの重要性
- 地域マーケティングとエリアマーケティングの違い
地域活性化マーケティングは人・物・金を呼び込む戦略
地域活性化マーケティングは、地域の魅力やターゲット層を明確にし、効果的に伝えることで人・物・お金を呼び込む戦略です。そのため、各地域の特性に応じた、異なる取り組みが必要とされます。
地域の特性を把握し、地域住民や地元企業との連携が不可欠です。地域ブランドの定着や地域経済の活性化をめざすためには、地域が一体となって考える必要があるでしょう。
地域活性化マーケティングの重要性
地域活性化マーケティングは、以下のような課題の解決に役立ちます。
- 少子高齢化
- 地域の人口減少
- 地域経済の衰退
地域活性化は、人口の増加や経済の活性化が実現できるだけでなく、地域文化の継承や住民生活の質が向上することにつながります。地域活性化マーケティングは、地方の発展と活性化をめざす重要な手段といえるでしょう。
地域マーケティングとエリアマーケティングの違い
地域マーケティングと混同されやすいエリアマーケティングとの違いを、次の表で比較しました。
項目 | 地域マーケティング | エリアマーケティング |
目的 | 地域の活性化 | ・地域での販売促進 ・売上向上 |
主体 | ・自治体 ・地域住民 ・地元企業 | 企業 |
戦略 | ・人 ・物 ・金を呼び込む | ・商圏分析による地域に合わせた商品 ・サービスの販売 |
施策 | ・観光客誘致 ・移住や定住促進 ・地域限定イベント開催 | ・商圏分析 ・販促活動 ・店舗運営 |
地域マーケティングは、地域経済の活性化や人口の増加をめざす取り組みであり、自治体や地元企業、住民が連携して行います。
一方、エリアマーケティングは特定地域での商品やサービスの販売促進や売上アップを目的とし、主体となるのは企業です。
地域活性化マーケティングのメリット
地域活性化マーケティングは、以下のメリットをもたらします。
- 地域経済の活性化
- 住民の満足度向上
- 地域住民のコミュニティ強化
次から詳しく解説します。効果的な戦略の立案や実行に役立ててください。
地域経済の活性化
まず、地域活性化マーケティングにより、地域経済の活性化が期待できます。例えば、地域の魅力を生かした特産品の開発は、新規事業の創出や新たな雇用の拡大につながります。
また開発した商品を販売し魅力が伝われば、観光客の増加によりさまざまな業種での売上アップが可能です。
地域ブランドが定着し地元のファンが増えれば、常連客や移住者の増加も見込めます。地域住民や企業が一体となって取り組むことで、地域の課題解決が可能となるでしょう。
住民の満足度向上
地域が活気づくと、住民の満足度向上につながります。地域の魅力発信により、住民が自分の住むエリアに関心を持ち、愛着が増す可能性があるでしょう。
また、住民の満足度が高ければ、地域からの流出人口を減らす効果も期待できます。地域活性化マーケティングは、住民の意識を変えることにも役立つと考えられます。
地域住民のコミュニティ強化
地域住民のコミュニティが強化されることも、地域活性化マーケティングのメリットの1つです。
地域活性化は、地域住民の協力なしでは成り立ちません。活動への参加により、住民同士の交流を促進し、共通の目標に向かって協力できれば、信頼関係の構築ができます。
さらに住民のつながりが強化され、人口減少の抑制にも効果を発揮するでしょう。人と人のつながりが強化されると、より良い地域づくりを実現できると考えられます。
地域活性化マーケティングを成功へ導く5つのポイント
地域活性化マーケティングを成功させるためには、以下の5つのポイントをおさえる必要があります。
- 課題の分析と目標設定
- 地域資源の調査と活用
- 地域住民や企業との連携
- デジタルマーケティングの活用
- 長期的視点に立った取り組み
課題の分析と目標設定
地域活性化マーケティングには、地域が抱える課題の分析と、明確な目標設定が欠かせません。
課題を分析したあとは、以下の5つの頭文字をとった目標設定の手法である「SMARTの法則」を活用するとよいでしょう。
- Specifi(具体的)
- Measurable(計測可能)
- Achievable(達成可能な)
- Relevant(関連性)
- Time-bound(期限がある)
<例> ・3年以内に観光客数を20%増加させる ・5年以内に、移住者数を100人増加させる ・10年以内に住民の平均所得を10%向上させる |
このように、明確な目標を設定することで、計画的かつ効率的な取り組みができます。
地域資源の調査と活用
目標設定後には、地域が持つ強みや魅力を発掘するために、地域資源の調査を実施します。地域資源には、次のようなものがあります。
- 特産物
- 食文化
- 歴史
- 伝統文化
- 自然環境
- 産業
- 建築物
- 人材
地域特有の有形・無形の資源を洗い出し、固定観念にとらわれない多角的な視点での分析が重要です。
地域住民や企業との連携
地域の活性化は、行政や企業だけの力では実現できず、地域の人との連携が成功のカギです。地域住民との連携には、次のような方法が考えられます。
- 意見交換会・ワークショップの実施
- アンケート調査
- SNSでの情報発信
住民の意見を聞きニーズを把握することで、より魅力的な商品やサービスの開発につながるでしょう。
また、住民が地域活性化の活動に参加すると、地域への愛着が深まり、地域活性化への意識を高める効果が期待できます。
デジタルマーケティングの活用
インターネットやSNSなどのデジタル媒体を活用した「デジタルマーケティング」は、地域活性化マーケティングにおいて不可欠なツールです。
低コストでデータの収集や分析が比較的簡単に行え、なおかつ地域住民や顧客とコミュニケーションが活発に行える利点があります。
そのため、デジタルマーケティングの有効活用により地域の魅力が広く伝わり、観光客誘致や移住促進などさまざまな効果が見込まれるでしょう。
長期的視点を持った取り組み
地域活性化は短期的な成果を期待するのではなく、長期的な視点を持って継続的に取り組むことが重要です。
計画・実行・検証・改善のPDCAサイクルの繰り返しで、目標に向かって進みやすくなります。
具体的には計画を実施後に定期的な検証を実施し、成功した施策は継続し、課題点は原因を分析し改善策の検討・実行します。
このように、地域活性化の計画や目標を立てる際には、あらかじめ長いスパンを見越してプランを立てておけば、途中で挫折することなく目標に近づけるでしょう。
地域活性化マーケティングの成功事例
近年、さまざまな地域で地域活性化マーケティングが取り組まれ、成果を上げています。ここでは、地域活性化マーケティングの成功事例として、以下の3つの地域を紹介します。
- 宮城県仙台市
- 長野県阿智村
- 静岡県袋井市
宮城県仙台市
新型コロナの影響により、仙台市は以降観光客や宿泊客が激減し、さまざまなイベントの中止や売上減少などの課題に直面していました。
そこで地域企業と連携し、2022年9月に「TOHOKU クリエイター EXPO」を開催しています。
イベントのターゲット層を20代〜30代の若者に設定し、InstagramやTwitterなどのデジタルマーケティングの活用により、短期的な集客に成功しています。
来場者は2日間でのべ4,000人に達し、地元企業とクリエイターの間に新たな仕事が生まれるきっかけとなりました。
課題 | 新型コロナウィルスの影響による観光客、宿泊客の減少、さまざまな業種での売上低下 |
対策 | TOHOKU クリエイター EXPOの開催 |
特徴 | ・ターゲット層に合わせた戦略 ・地域企業とクリエイターの交流促進 |
効果 | ・来場者はのべ4,000人 ・地元企業とクリエイターとの新たなビジネス機会の創出 ・わずか2週間で100万のインプレッションを獲得 |
長野県阿智村
長野県南部に位置する阿智村は、環境省が実施する全国星空継続観測で日本一星が輝く場所に認定されています。
光害が少ない特性や雄大な自然環境を生かした多彩なイベントにより、地域活性化が実現した事例です。
真っ暗闇に輝く満天の星が見られる「星空ナイトツアー」は、長野県の水力発電所でつくられた電気を活用し環境に配慮しています。
顧客の10月〜11月の早朝にゴンドラを運行する「雲海Harbar」では、季節によって変化する雲海と山々の絶景が人気です。
2018年5月までのイベントの参加者は累計45万人を超え、多数の観光客とリピーターの獲得に成功しました。
課題 | ・高齢化や過疎化による人口減少 ・温泉業の衰退 |
対策 | 「日本一の星空ナイトツアー」や「雲海Harbar」を実施 |
特徴 | ・地域資源を生かした戦略 ・顧客ニーズの把握 ・地域との連携 |
効果 | ・「天空の楽園 ナイトツアー」が地方創生大臣賞受賞 ・地域の定着率・雇用・交流人口の増加 ・イベントの参加者は累計45万人(2018年) |
静岡県袋井市
静岡県西部にある袋井市は、「自然と共生し、誰もが輝けるまち」を目指し、多様な働き方の実現や子育て世帯が活躍できる街づくりに取り組んでいます。
具体的には、充実した子育て支援や空き店舗の解消、自然環境を生かした住みやすさのPRなどです。
支援制度には、東京圏からの移住者に対する支援金の支給や就農支援、新婚世帯への引っ越し費用や住居費の一部補助などがあります。
上記の施策の効果により、平成26年の総人口約87,000人から、令和6年2月現在では約88,000人と、10年間で1,000人ほどの人口増加に成功しました。
課題 | ・耕作放棄地の増加 ・地域特産品の生産者の高齢化 ・定着率の低下や退職者増加による、地元企業の人手不足 |
対策 | 多様な働き方と子育て支援による若者の移住促進 |
特徴 | ・魅力的なキャッチコピーやロゴの作成 ・SNSを通じた情報発信 ・「移住体験ツアー」や「海プロフェスタ NIGHT WAVE」などの体験型イベント開催 |
効果 | ・人口増加(10年間で約1,000人) ・移住者数や出生率の増加 |
地域活性化マーケティングにおける注意点
地域の活性化には、専門コンサルタントの活用も有効な手段です。しかし、依頼する際には信用できる業者を見極め、地域住民のニーズやプロジェクトのゴールをしっかりと伝える必要があります。
コンサル業者に丸投げするのではなく、専門家のアドバイスを受けながら自治体や住民が主体的に取り組むと、より効果的な地域活性化が実現可能となるでしょう。
また、成功例だけではなく、失敗例から学ぶことも重要です。失敗した原因を分析し、教訓を活かして地域に合った戦略を立ててください。
地域活性化は短期間で成果は出にくいと認識し、焦らず長期的な視点での取り組みが大切です。
地域活性化マーケティングは長期的な視点での取り組みが必要
地域活性化マーケティングは、地域の魅力を発信し、人・物・金を呼び込むための有効な手段です。都市部以外の地域での少子高齢化や人口減少などの課題解決にも貢献できます。
しかし、地域活性化は決して容易に成し遂げられるものではなく、長期的な視点で行政・企業・住民が一体となった取り組みが重要です。
本記事で紹介した成功のためのポイントを参考に、地域の魅力を効果的に伝えられる対策を練り、地域活性化を実現しましょう。